平均販売価格が1,000元を超えるスキンケアブランドが、中国のECで販売を伸ばしています。
MeritcoのECデータ分析によると、2026年1〜7月、ある高価格帯のスキンケアブランドのプラットフォームAにおける流通取引総額(GMV)は9億1,100万元となり、前年同期比42.7%増加しました。平均販売価格は1,258元です。一方、平均販売価格が183元、196元だった別の2ブランドも、同じプラットフォームで販売を伸ばしました。
200元前後から1,000元超まで、異なる価格帯で成長するブランドがあります。消費者が一斉に安い商品へ移っている、という説明だけでは、この動きを捉えきれません。
メイクアップでも、フェイスパウダーやファンデーション、マスカラ下地に、1億元を超える販売規模の商品が見られます。ブランド名から商品に目を移すと、価格、組み合わせ、容量、使う場面という、比較すべき点が見えてきます。
消費者は何に価値を感じ、今使っている商品から何を替えようとしているのでしょうか。本記事では、中国の主要EC3プラットフォームの販売データとMeritcoの消費者リサーチをもとに、商品が選ばれる理由を考えます。
シェア上昇の背景を確かめ、商品ごとの動きへ
まず、中国のスキンケアEC全体の動きを確認します。対象3プラットフォームの2026年1〜7月の流通取引総額は、前年同期比9.9%減の1,229億9,000万元でした。
この中で、上位10ブランドのシェアは27.6%から25.9%へ低下し、売上順位11〜50位のブランド群は28.8%から31.8%へ上昇しています。ただし、カテゴリー全体の規模を使って概算すると、11〜50位の流通取引総額は前年の約393億元に対して約391億元で、ほぼ横ばいです。
この順位帯が販売規模をおおむね維持した一方、上位10ブランドの減少幅が大きかったため、相対的にシェアが上がったと読めます。各年の順位帯を比較しているため、同じブランド群を追跡した成長率ではありません。
図:スキンケア市場におけるブランド・商品の集中度
市場全体や順位帯の動きを把握した後は、具体的にどの商品が売れているのかを見る必要があります。
たとえば、200元前後のクリームを投入する場合、比較対象になるのは有名な海外ブランドだけではありません。消費者がすでに使っている、同価格帯の中国ブランドの商品も競争相手です。
使い慣れたクリームに大きな不満がなければ、新しい商品へ切り替える理由は弱くなります。品質や成分の説明を、今の商品と比べて何が違うのかまで具体化できるかが問われます。
高価格の商品とセット商品では、比較される点が違う
スキンケアの販売動向は、プラットフォームによっても異なります。プラットフォームAの流通取引総額は638億8,000万元で、前年同期比3.9%増加しました。一方、Bは402億6,000万元で27.3%減、Cは188億5,000万元で3.8%減でした。
同じ中国のスキンケアECでも、販売が増えた場所と減った場所があります。
図:中国化粧品ECのプラットフォーム別販売動向と市場構成
販売が拡大したプラットフォームAでは、冒頭で紹介した高価格帯のブランドに加え、平均販売価格183元のブランドが16.1%、196元のブランドが29.1%の成長を記録しました。
ここでの平均販売価格は、販売された商品の構成を反映した数値です。顧客1人当たりの購入額や、特定商品の価格を示すものではありません。それでも、異なる価格帯に成長ブランドが存在することは確認できます。
高価格の商品を検討する消費者には、価格差を納得できる理由が必要です。期待する効果、使い心地、これまでの評判、商品説明への納得感。そのどこに価値を感じるかによって、購入の判断は変わります。
一方、セット商品では比較の仕方が変わります。今回のデータでは、あるブランドのスキンケアセットが、プラットフォームAで3億2,600万元の流通取引総額を記録しました。
セットを選ぶ際には、1本の価格に加え、何が何点入っているのか、どのくらい使えるのか、単品で買うより得なのかを比較できます。商品の組み合わせによって、購入金額の受け止め方も変わります。
事業側では、その組み合わせが利益にどう影響するかも確認したいところです。値引きや付属品を増やすことで販売を伸ばしているなら、その費用まで含めて評価する必要があります。
高価格品では、価格差に見合う価値をどう伝えるか。セット商品では、組み合わせ全体を魅力的に見せながら、採算をどう確保するか。個別ブランドの成長理由は販売データだけでは断定できませんが、商品を比較する軸は価格帯や販売形態によって異なります。
メイクの一工程なら、新しい商品を取り入れやすい
メイクアップ・香水カテゴリーの流通取引総額は、対象3プラットフォーム合計で497億8,000万元となり、前年同期比0.7%減でした。プラットフォーム別では、Aが6.6%増、Cが2.5%増、Bが12.8%減です。
プラットフォームAの商品別データでは、あるブランドのフェイスパウダーが1億6,700万元、別のブランドのファンデーションが1億8,200万元、さらに別のブランドのマスカラ下地が2億元の販売規模に達しています。これは各商品の販売規模であり、品目全体の成長率を示すものではありません。
これらの商品には、メイクの特定の工程を担うという共通点があります。
フェイスパウダーを替えるために、ファンデーションや口紅まで同じブランドにそろえる必要はありません。マスカラ下地だけなら、普段のメイクを大きく変えずに試せます。新しいブランドにとって、一つの工程で使ってもらうことが、別の商品も試してもらう入口になり得ます。
商品を選ぶ理由も、具体的な困りごとから考えられます。午後になるとメイクが崩れる、まつ毛のカールが落ちる、外出先で化粧直しをしにくい。どの不便に対応する商品なのかが明確であれば、消費者は自分に必要かどうかを判断しやすくなります。
ただし、同じ商品でも使う場面によって求められる条件は異なります。通勤前のメイクでは手早く仕上がることや崩れにくさ、旅行では持ち運びやすさや液漏れしにくさが重要になります。使用頻度が低い人には、最後まで使い切れる容量も判断材料です。
Meritcoの消費者リサーチでも、初めて使うとき、通勤、旅行、使い切りやすさ、品質や使用感といった観点から、商品の選ばれ方を整理しています。
図:ニーズや使用場面によって異なる、化粧品に求められる条件
使用場面を分けると、同じ評価の中にある違いも見えやすくなります。たとえば、保湿感を気に入っていても、その上にメイクを重ねると使いにくいクリームなら、朝は使わず夜だけ使う人もいるでしょう。
これは使用場面を考えるための例ですが、「使用感がよい」という一言だけでは、いつ、どのように使われているかまでは分かりません。
品質や研究開発の強みを伝える際も、それが日々の使用にどう表れるかまで説明できると、商品の違いが伝わりやすくなります。メイクを重ねやすい、化粧直しの手間を減らせる、旅行先でも普段と同じケアを続けられる。こうした具体的な説明が、使い慣れた商品と比較する手がかりになります。
小容量の香水には、お試し以外の役割もある
香水の流通取引総額は、対象3プラットフォーム合計で48億5,000万元となり、前年同期比1.2%減少しました。なお、香水は前述のメイクアップ・香水カテゴリーに含まれます。
価格帯別では、500〜1,000元が28.9%と最も大きな構成比を占めています。一方、200〜500元の構成比は前年同期から1.7ポイント上昇し、1,000元超は2.4ポイント低下しました。
購入価格帯の変化を見る際には、容量も確認したいところです。同じブランドでも、小容量の商品を選べば1回の支払額は下がります。より安いブランドへの乗り換えと、同じブランド内での容量変更では、事業上の意味が異なります。
今回の価格帯データだけで、小容量商品が中価格帯の拡大を引き起こしたとは言えません。ただし、価格戦略を考えるうえでは、通常サイズの値下げに加えて、容量を変える選択肢があります。
小容量商品は、初めての香りを試す際の負担を抑えられます。また、持ち歩きたい、複数の香りを使い分けたい、使い切れる量を買いたいという需要にも対応できます。
そのため、小容量商品を購入した人が通常サイズへ移行しなくても、商品が目的を果たしている場合があります。旅行用として同じ小容量商品を繰り返し買う人にとっては、そのサイズ自体に価値があります。
事業として確認したいのは、小容量商品によって新しい顧客が増えたのか、既存顧客の使用場面が広がったのか、それとも通常サイズからの買い替えが起きただけなのかという点です。通常サイズの販売や利益への影響まで見ることで、容量別の商品構成を評価できます。
商品企画は、消費者が今使っているものから考える
中国市場に新しく商品を投入するなら、その商品が消費者の手元にある何に置き換わるのかを考える必要があります。
クリームなら、すでに使っているものがあります。フェイスパウダーなら、今のメイクの仕上げに使っているものがあります。新商品を選んでもらうには、現在の商品から替える理由、あるいは新しく買い足す理由が必要です。
「日本品質」や「高い研究開発力」は商品の背景を伝えます。購入を検討する場面では、それを具体的な違いにつなげたいところです。どの不満を解消するのか、どの場面で使いやすいのか、価格差に見合う価値は何か。消費者が今の商品と比較できる説明が重要になります。
新規参入時は、選ぶ理由を説明しやすい少数の商品から、購入と使用の反応を確かめる方法があります。一方、すでに中国で販売している場合は、あるチャネルでの成長が新規顧客の獲得につながっているかを確認したいところです。
既存顧客がより安い販売先へ移っただけなら、そのチャネルの成長がブランド全体の拡大につながるとは限りません。販促費や販売手数料も含めて見ることで、次に投資する商品とチャネルを判断しやすくなります。
図:中国市場への新規参入と既存事業の拡大で、確認すべき論点
購入後の行動も、商品の改善や販売施策を考える手がかりになります。
リピート購入がない場合でも、購入したまま使っていないのか、使ってみたが合わなかったのか、まだ使い切っていないのかで、対応は変わります。
使い方が分からず手が伸びないなら、説明を見直す余地があります。使い心地に不満があるなら、商品そのものや購入前の説明とのずれを確認する必要があります。まだ使い切っていないなら、購入を促すタイミングや容量が適切かを考えられます。
Meritcoの消費者リサーチでは、こうした違いを、選ぶ・買う・使うという一連の行動から整理しています。販売データが示す商品の動きに、使用時の事情を重ねることで、次に確認すべき問題が具体的になります。
図:化粧品を選び、購入し、使用するまでの消費者行動
中国の化粧品ECで商品を比較する際には、価格と販売規模に加え、組み合わせ、容量、使用場面を見ることで、選ばれる理由を考えやすくなります。
高価格のスキンケアでは何に価値を感じるのか。セットには使いたい商品がそろっているのか。新しいフェイスパウダーは普段のメイクに取り入れやすいか。小容量の香水は試すためか、持ち歩くためか。
こうした違いを捉えることが、商品の特徴を伝え、購入後も使い続けてもらうための商品企画につながります。
※データ・分析について
本記事は、MeritcoのECデータ分析と消費者リサーチに基づき、プラットフォーム名・ブランド名・商品シリーズ名を匿名化しています。EC数値は2026年1〜7月の中国主要3プラットフォーム(A・B・C)の集計値であり、中国市場全体の規模や各社の公式売上高を示すものではありません。消費者に関する分析は定性的な考察を含み、消費者全体の傾向を示すものではありません。
